CIELプロジェクト

CIEL Project

空を翔るクラウドの旅が
始まった
ハイブリッドクラウド基盤
「CIEL(シエル)」誕生
JALグループのビジネスの方向性を見据え
自動化によるシステム開発の
スピードアップを目指す
フランス語で「空」を意味する「CIEL」を愛称とするハイブリッドクラウド基盤の構築プロジェクトは2016年にスタートし、2018年12月にサービスインした。「CIEL」は、JALグループが運航する航空機の運航管理から機体の整備、旅客サービスなど、JALグループのビジネスのあらゆる場面で利用されているシステムの土台となるものである。

一般的にシステムにおける基盤とは、サーバー、ストレージ、ネットワークなどで構成されるが、クラウド基盤 は仮想化技術などを用いて、これらの機器の機能をソフトウェアに置き換え高度化するものだ。このプロジェクトでは、システムごとのニーズにあわせて以下に示す3つの異なるクラウド基盤をシームレスに利用できるよう構築したことから「ハイブリッド」という言葉が使われた。

①JALグループが自営する
「プライベートクラウド基盤(CIEL/J)」
②専有IaaSによる
「パブリッククラウド基盤(CIEL/D)*1
③共有laaS・PaaSによる
「パブリッククラウド基盤(CIEL/S)*2

また、これら3つのクラウド基盤を統合的に管理する管理基盤(CIEL/manager)、3つのクラウド基盤を相互接続するための専用のネットワーク(CIEL/X)も構築した。

このプロジェクトが目指したのは、競争と変動の激しい航空業界におけるJALグループのビジネスの方向性を踏まえ、成長と安定性を両立したエアラインになるためのIT環境を整えることだった。先進的な「ハイブリッドクラウド基盤」の構築に加え、後述する「自動化」の技術を活用・発展させていくことで、JALグループにおけるシステム開発は大幅にスピードアップする。これにより、JALグループが掲げる安全運航の堅持、お客さまへ最高のサービスの提供、コスト競争力の強化への取り組みをより一層加速させていく。
プロジェクトメンバーが目指す最終目標に向け、空を翔けるクラウドの旅は始まったばかりである。

*1 IaaS(イアース)とは、CPU、メモリ、ストレージなどのハードウェアリソースをインターネット経由で提供するサービス。CIEL/DはIBMの提供するクラウドサービスを利用する。
*2 PaaS(パース)とは、アプリケーション実行のためのプラットフォームをインターネット経由で提供するサービス。CIEL/SはAWS(アマゾン ウェブ サービス)が提供するクラウドサービスを利用する。

Member

  • ハイブリッドクラウド基盤部
    インフラコーディネータ
    矢是 秀明
    2009年入社 工学部機械工学科
    CIELのコンセプト策定やアーキテクチャ検討の段階から運用に至るまで幅広く携わり、プロジェクト全体の牽引役を務めた。また、サーバー・ストレージ領域を設計するエンジニアの役割も担った。
  • ハイブリッドクラウド基盤部
    インフラコーディネータ
    仁木 岳
    2009年入社 情報工学部
    ネットワーク領域を担当するチームのリーダーとして構築に参画した。特に、JALグループ専用のCIEL/Jと、3つのクラウド基盤を相互接続する専用線CIEL/Xの構築を担当。構築後も、機能を拡張するための開発に取り組んでいる。
  • ハイブリッドクラウド基盤部
    インフラコーディネータ
    石原 晶子
    2019年入社 情報理工学部
    AWSを利用するパブリッククラウド基盤CIEL/Sにおける、サービスの拡充 に関する設計から運用までを担っている。
専用のネットワークを構築するために新技術を採用
課題の解決にはこれまでとは全く異なる視点が必要だった
矢是

仁木さんは入社以来、ネットワークのスキルを磨いてきて、CIELプロジェクトではネットワーク領域を担当するリーダーとして参加しましたが、どのようなところに苦労しましたか。

仁木

CIEL/Xの構築にあたり、ネットワークを仮想化するための先進的な技術である、Cisco社のACIおよびVMware社のNSXという2つのソリューションを掛け合わせているのですが、開発当時はこのような事例が世の中にほとんど無かったため、事前に入念な検証をする必要がありました。

石原

システム開発における従来のネットワークといえば、ルーターやスイッチと呼ばれるような通信機器を1つ1つ設定しなければならないため、職人技が必要とされるイメージがありました。しかしながらCIELでは、これらの設定がソフトウェアで制御できるようになるという、これまでとは大きく異なった構築方法に戸惑いも多かったのではないでしょうか。

仁木

新技術の採用により、ネットワークの構成や利用する機能をゼロから考え設計することは、私にとってもJITにとっても大きな挑戦でしたが、CIEL構築にはなくてはならない技術になるとの思いを持ち、プロジェクト開始前に3週間にわたり社外のPoC(*3)環境で技術検証を実施させてもらいました。

矢是

今の話は構築作業に入る前段階でのことですね。構築作業に入ってからは、どのような苦労や課題があり、またそれらをどう克服してきたのでしょうか

仁木

CIELを一緒に構築したベンダー各社とは、ほぼ毎日、新技術や構築の進め方などについてディスカッションをする必要がありました。そのため対面での打ち合わせだけでなく、メールやチャットなどのさまざまなツールを駆使してコミュニケーションを取り、プロジェクトを進めてきました。また、プロジェクト期間が非常に短く計画されていたこともあり、密に連携を取りながら物事の判断・決定スピードを落とさず、スケジュール通り確実に進めていくことを意識していました。

石原

クラウド基盤とはいえ通信機器などは必要になるので、そういった機器を保管するための施設の準備も大変だったのではないでしょうか。

仁木

そうですね。大規模な基盤構築なので、施設の設計や作業調整に汗をかきました。私の担当するネットワーク領域はプロジェクト全体の中では最初に用意する必要があるため、ここで遅れると後続の作業工程への影響が大きくなります。短い期間で進めなければならなかったので、施設担当や工事担当の方には難しいお願いをせざるを得ない状況もありましたが、関係者全員でベクトルを合わせ一つの方向を目指したことで、そういった状況も乗り越えることができました。

*3 PoC(ポック)とは、Proof of Conceptの略で、「概念実証」という意味である。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションのことを指す。

運用における作業の自動化を推進しつつ
新しい技術と向き合う日々
矢是

石原さんは、CIELの構築が完了しサービスインした後からプロジェクトに参加していますよね。

石原

はい。私は中途入社で、前職ではさまざまな業界のシステムを構築するシステムインテグレーターとして働いていました。システムを構築する企業から、構築したシステムを利用するユーザー企業側へと立場を変え、システムの構想から運用までのすべての工程を手掛けることができるようになりたいと思い、JALインフォテックに入社しました。
現在は、CIEL/Sの運用や維持管理を担当しております。具体的には、のCIEL/Sが提供する機能の更なる拡充を目指した設計や構築、運用業務の自動化の推進、またAWS社が提供する新たなサービスをCIELに活かすことができないかの構想など、幅広い業務をこなす毎日を送っています。

矢是

石原さんの話の中で、CIEL構築プロジェクトの狙いの一つである“自動化”というキーワードが出てきました。なぜ、クラウド基盤へシフトする必要があるのかというと、さまざまなシステムを開発する際に、これまでには無かった自動化のツールを活用し、開発のスピードアップを図りたいからです。

仁木

JALグループとして新しいサービスを導入したいと考えた時に、それをITの面からすばやく実現していくための環境を整えたいということですね。

矢是

その通りです。加えて、石原さんの話の中でもう一つ重要なのは、パブリッククラウドの特徴でもある新しいサービスに関する話ですね。

石原

AWS社は、定期的に何百という単位で新しいサービス提供や機能拡充をしています。こうしたたくさんの新しいサービスの中から、CIELに活かせるサービスが何かないかを常に探していくことは、非常に大変な仕事ではありますが、やりがいがあります。こういった新しいサービスを活用することで現在はヒトが手作業で対応している作業などを自動化し、より利便性の高いクラウド基盤に進化させていくことができないか、と考えながら取り組んでいます。

仁木

石原さんは、維持管理のリーダーも担当されていますが、そのような立場としてやりがいに感じていることはありますか。

石原

既存の機能の改修から、新しい機能の開発まで幅広く携わるため、責任が重く大変ではありますが、裁量の範囲が広いためとてもやりがいを感じています。また、前職では経験したことが無かった人員や費用の管理といったマネジメント業務にも取り組み、仕事の幅を広げられるよう日々努力しています。

会社や組織の壁を越え
ONE TEAMで活動したことが
プロジェクトを成功に導いた
一番の要因だった
仁木

矢是さんは、CIELプロジェクトの推進役として構想段階から携わってきましたね。プロジェクトを成功させるために、どのような思いを持ちながら取り組まれてきたのでしょうか。

矢是

私たちJALグループが、激動の航空業界の中で常に成長し続けるためには、その時代のニーズに合った先進技術の投入が必要不可欠だと考えています。「クラウドへのシフトが必要だ」という声は私だけでなく、さまざまな部署からも上がっており、JALインフォテックの多くの社員が時代の流れをきちんと見据えていたということが、ハイブリッドクラウド基盤構築の大きな後押しとなりました。それに加え、この基盤構築に必要不可欠な技術やソリューションを提供していただいたVMware社、AWS社、IBM社などをはじめとする多くの企業と、新技術導入の実現性や基本設計、プロジェクト管理から運用設計に至るまで、非常に多くの検討を重ねに重ねてきました。その中で、メンバー全員が企業や組織の壁を越え、ベクトルを合わせONE TEAMで活動してきたことが、プロジェクトの成功に繋がったと考えています。

石原

仁木さんや私は、プロジェクトでは一部の領域を担当していましたが、矢是さんは全体を調整する立場でしたよね。このような大きなプロジェクトでそのような立場を経験された矢是さんとして、特に難しいと感じたことはありましたか。

矢是

性質の全く異なる3つのクラウド基盤を同時に構築する必要があったので、それぞれの構築チームとの間で整合性を保つことは非常に大変でした。それぞれの基盤で活用する技術やソリューションが全く異なったとしても、JALグループのハイブリッドクラウド基盤であるという“1本の筋”を通しておく必要があると考え、それぞれチームが個別に実施していたほぼすべての会議に参加しました。そこで、他のチームに関する情報を共有したり、自分自身の考えをメンバーに伝えたりすることで議論を促し、苦労しながらもベクトルが指し示す一つの方向に全チームで向かっていくことができました。

仁木

構築したハイブリッドクラウド基盤は、社内外からの評価が非常に高いと聞いています。

矢是

あるITイベントにて、プロジェクトの全貌を社外のみなさまに向けて講演する機会があったのですが、最先端の技術を活用し3つのクラウド基盤をシームレスに使い分ける「ハイブリッドクラウド基盤」を構築したことは、高い評価をいただきました。社内でも、この基盤をどのように活用していくかという議論が日を追うごとに増えており、未来のJALグループのシステム構築・運用の在り方を変えていく土台ができたと確信しています。

空を翔けるクラウドの旅の
行き着く先には
仁木

私は、CIEL構築プロジェクトは道半ばだと思っています。話の中のキーワードとして何度も登場した“自動化”は、私が担当するネットワークの領域でもまだ土台ができたに過ぎません。今後はこの土台の上に立ち、この基盤を育てていかなければならないと考えています。

石原

そうですね。日々、たくさんの新しい技術やサービスが提供されてくる中で、それらを積極的に取り入れていくことで、社員のみなさんが楽しくシステムの開発に取り組めるような基盤にしたいですね。

矢是

最先端のIT技術を活用することでJALインフォテックをはじめJALグループの仕事のやり方、働き方自体を変えていくための環境を作りたいと考えています。CIELが完成したことですぐに直接的な変化が起こるわけではありませんが、近い将来CIELが、社員だけでなくJALの翼をご利用いただくお客さまに、最先端のテクノロジーを活用したサービスをご提供する一助となり、「一歩先を行く価値を創ります」というJAL Vision実現の一翼を担うと信じています。これからもチーム一丸となり、ハイブリッドクラウド基盤CIELをより一層進化させていきましょう。

CIELプロジェクト
ユーザーの声
CIELプロジェクト
ユーザーの声
日本航空株式会社
IT運営企画部 技術戦略グループ
大嶋 将志 氏
※現在は JALインフォテックに出向
IT運営企画部 センター基盤グループ
髙瀬 翼 氏
プロジェクトにおける
JALインフォテックとの連携
大嶋

まだプロジェクトの名もない頃から、JALグループのシステム基盤サービスをどのように高度化し、ビジネスに貢献できるシステム基盤にするべきか、「自分たちはこうしたい」という意志を持って、JALインフォテックのメンバーが 本気で向き合ってくれました。だからこそ、サービスインまで険しい道のりを、会社や組織の壁を越え本音でぶつかり合いながら、最後まで共にやり切ることができたと感じています。

高瀬

3つのクラウド基盤構築とそれに付随する関連基盤構築を並行して進めなければならない複雑さに加え、スケジュールもタイトという大変難しいプロジェクトでしたが、JALインフォテックのメンバーには、個々のプロジェクトだけでなくプロジェクト全体を把握し、さらに設計・構築だけでなく、サービスイン後の維持管理もイメージして参画してもらいました。その結果、さまざまな関係者を巻き込み一体感を持ってプロジェクトを運営でき 、サービスイン後もCIELの活用を推進していく立場として、非常に頼もしく感じています。

プロジェクトにおいて心がけていたこと
大嶋

プロジェクト開始時、JALインフォテックのメンバーとCIELのコンセプトを作成し、プロジェクトの要所で判断が必要な場面では、そこに立ち返るように常に心がけました。個々の領域における個別の判断については各チームのリーダーに任せていましたが、プロジェクト全体の方針を決める際には、開始時に作成したコンセプトをベースにし、メンバー全員で特に以下の2点に注力していました。
・領域ごとにCIELプロジェクトの仕様の整合性やスケジュールの矛盾が発生しないこと
・領域跨りの問題・課題は優先順位をつけて対応すること

髙瀬

CIELをさまざまなシステムの基盤として活用して、初めて「システム基盤としての価値」が見出されるので、いつでもスムーズにCIELを導入できるようにするための維持・運営を心がけています。そのために、JALとJALインフォテックで作成したCIELのコンセプトから、具体的な利用の流れや制約事項までをまとめた利用ガイドを公開しており、CIELでの新たなサービス提供や日々の改善、新たなIT施策への対応を定期的にガイドに取り込むことで、タイムリーな情報提供を続けています。CIELで利用している外部サービスも常に進化しているので、それらを取捨選択し何をCIELで活用するかを模索、検討しているJALインフォテックが果たす役割はとても大きいと思います。